卒業生とその進路

低電力ウェイクアップ受信機のためのPWM復調回路


松下 拓道

2011 年度 卒 /修士(工学)

修士論文の概要

近年、ユビキタス情報化社会の進展に伴い、様々な情報をセンシングするスマートセンサや、それらによるセンサネットワークの構築が要求されている。例えば、RFID システムや医療用の埋め込みセンサ などへの応用が考えられている。これらセンサ LSI は広範囲にばらまかれ、限られたエネルギー源で長期間動作することが求められる。この要求を満たすためには、センサ LSI 自体の消費電力を抑えることも重要だが、他にもウェイクアップ機能を持たせる解決法も考えられる。ウェイクアップ機能により、通信待機時に回路オフ動作を行わせることで動作期間を延ばすことができる。この動作を行わせるためには、ノード LSI 回路内に呼出し信号を検出するための「ウェイクアップ受信機」を組み込む必要がある。ウェイクアップ受信機を常時動作させるため、なるべく簡単な構成にして消費電力を抑えることが要求される。このことからチップ上に実装できるシンプルな受信機を提案する。復調に高精度クロック源を必要とせず、ベースバンド信号からクロックを抽出することで、受信機全体の消費電力を低く抑えた。

本研究では、このウェイクアップ受信機のための復調回路を設計した。まず、以上の仕様を満たすため検波・増幅回路を提案し、解説する。ミキサや局部発振器(LO)を取り除いたシンプルな構成とすることで、回路面積と消費電力を抑えた。また本回路の後段に続く復調回路に求められる機能について述べる。次に受信機の後半部分である復調回路について説明する。この回路では呼出し信号としてパルス幅変調( PWM )を用いることで、高精度クロック源を使わない構成とした。最後に動作シミュレーションの結果と試作チップの測定結果を示し研究の総括とした。