卒業生とその進路

磁束量子回路に基づく論理デバイスの研究


猪口 誉敏

2000 年度 卒 /修士(工学)

修士論文の概要

本研究では、磁束量子回路を用いた新しい論理デバイスの構成方法を提案する。情報処理の方法としては、グラフ論理表現とアナログコンピューティング(相似計算法)の2種類に注目する。それらの情報処理方法にもとづくデバイスの設計方針を確立するとともに、その有効性について示す。

近年におけるエレクトロニクスの劇的な進歩を支えてきた大きな柱は、トランジスタの発明とそれに続く集積回路およびSi-CMOS回路技術の登場にある。CMOS回路はプロセス技術の発達に伴い、寸法が微細化されることで劇的な発展を遂げてきた。そして現在においてはどの技術にも揺るがされることのない地位を築くに至っている。しかしこの微細化もいつまでも続くものではない。現在の発展を維持しようとしたときに、いずれ限界の壁にぶつかることが予想されている。そこで現在の半導体集積回路の微細化が限界に達したときに、それに代わるデバイスの開発が必要となっている。そこで近年それに置き代わることのできるデバイスの一つとして磁束量子回路が提案されている。これはジョセフソン接合を含む超伝導ループに鎖交する磁束を信号担体とすることで、情報処理を行おうとするものである。

学術論文

  1. Saito Y., Marukame T., Inokuchi T., Ishikawa M., Sugiyama H., and Tanamoto T., "Spin injection, transport, and read/write operation in spin-based MOSFET," Thin Solid Films, vol. 519, no. 23, pp. 8266-8273 (2011).
  2. Saito Y., Inokuchi T., Ishikawa M., Sugiyama H., Marukame T., and Tanamoto T., "Spin-Based MOSFET and Its Applications," Journal of The Electrochemical Society, vol. 158, no. 10, pp. H1068-H1076 (2011).
  3. Tanamoto T., Sugiyama H., Inokuchi T., Marukame T., Ishikawa M., Ikegami K., and Saito Y., "Scalability of spin field programmable gate array: A reconfigurable architecture based on spin metal-oxide-semiconductor field effect transistor," Journal of Applied Physics, vol. 109, pp. 07C312-1-07C312-3 (2011).
  4. Inokuchi T., Marukame T., Ishikawa M., Sugiyama H., and Saito Y., "Electrical Spin Injection into n-GaAs Channels and Detection through MgO/CoFeB Electrodes," Applied Physics Express, vol. 2, pp. 023006-1-023006-3 (2009).
  5. Inokuchi T., Yamada T., Asai T., and Amemiya Y., "Analog computation using quantum-flux parametron devices," Physica C, vol. 357-360, no. 2, pp. 1618-1621 (2001).

国際会議

  1. Inokuchi T., Marukame T., Tanamoto T., Sugiyama H., Ishikawa M., and Saito Y., "Reconfigurable characteristics of spintronics-based MOSFETs for nonvolatile integrated circuits," 2010 Symposium on VLSI Technology, Hilton Hawaiian Village, Honolulu, USA (Jun. 15-17, 2010).
  2. Marukame T., Inokuchi T., Ishikawa M., Sugiyama H., and Saito Y., "Read/write operation of spin-based MOSFET using highly spin-polarized ferromagnet/MgO tunnel barrier for reconfigurable logic devices," IEDM 2009, Hilton Baltimore Hotel, Baltimore, USA (Dec. 7-9, 2009).
  3. Inokuchi T., Yamada T., and Amemiya Y., "Analog Computation Using Quantum-Flux Parametron Devices," Abstracts of the 13th International Symposium on Superconductivity, p. 233, Tokyo, Japan (Oct. 14-16, 2000).

国内学会

  1. 猪口 誉敏, 山田 崇史, 雨宮 好仁, "磁束量子パラメトロンによるアナログコンピューティング," 電子情報通信学会ソサイエティ大会, (名古屋), 2000年9月.
  2. 猪口 誉敏, 山田 崇史, 雨宮 好仁, "磁束量子回路によるアナログコンピューティング," 電子情報通信学会総合大会, (広島), 2000年3月.
  3. 山田 崇史, 猪口 誉敏, 雨宮 好仁, "磁束量子回路によるアナログコンピューティング—磁束量子パラメトロンで組み合わせ問題を解く—," 電子情報通信学会 超伝導エレクトロニクス研究会, SCE99-26, 1999年10月.
  4. 猪口 誉敏, 山田 崇史, 雨宮 好仁, "磁束量子を信号担体とするグラフ論理回路," 電子情報通信学会ソサイエティ大会, (船橋), 1999年9月.
  5. 猪口 誉敏, 山田 崇史, 朝日 昇, 雨宮 好仁, "リードマラーグラフにもとづく磁束転送論理回路," 電子情報通信学会総合大会, 1999年3月.