卒業生とその進路

IoTの省電力・高速化に向けた不揮発性マイコン低電力化及びMemcached高速化アーキテクチャの研究


金 多厚

2014 年度 卒 /修士(工学)

修士論文の概要

近年、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)に関する技術が注目されており、人間生活に関わる全ての物がインターネットに接続されようとしている。また、IoTの発展により、様々な分野でIoTが実現されていくと、今までより多くの物から情報を集め、分析することができるようになる。それにより、今までのない人間生活に有用なサービスや情報を生み出せると期待されている。IoTに相当する概念は新しいものではなく、以前から議論されてきたものである。しかし、近年になってから大きく注目され、実現され始まっているのは、IoTを支えるプラットフォームの省電力・高速化テクノロジーの進歩が大きな影響を与えている。実際にIoTを様々な分野で実現されていくと、インターネットに接続されるものが増えていき、処理すべき情報の量が爆発的に増大する。したがって、様々な分野でのIoT実現に向け、今後もIoTを支えるプラットフォームの省電力・高速化が必要である。

また、IoTを支えるプラットフォームは、大きく分けて2つに分けられる。一つは、環境に散在し、インターネットに接続されることになる物(Things)であり、もう一つは物から集められた情報を分析し、有用な情報に加工するサーバである。物(端末)に関しては、ボタン電池や太陽光発電等によって得られる少量のエネルギーで長時間の駆動が要求されるため、高速化より第一に低電力化がサーバに関しては、IoTの実現により、サーバで処理する情報量が爆発的に増えるため、より高速な情報処理が要求される。そのため、サーバは第一に高速化が重要である。

このような背景から本研究では、サーバ側の高速化及び端末側の低電力化を実現するアーキテクチャを開発することにした。具体的には、サーバの処理であるMemcached処理のハードウェア化及び二重キャッシングによる高速化アーキテクチャと、不揮発性マイコンの低電力化を目的とした透過型命令キャッシュアーキテクチャの開発研究を行った。また、各アーキテクチャに関する評価も行い、実用性も示す。本研究で提案するMemcached処理のハードウェア化及び二重キャッシングによるMemcached高速化アーキテクチャでは、レイテンシが約3.5倍改善され、スループットが約5倍から9倍まで改善されることになった。また、透過型命令キャッシュアーキテクチャでは、不揮発性マイコンの不揮発性メモリで消費される電力の割合が30%から70%であると、透過型命令キャッシュの導入により、約10%から52%低電力化されることになった。

学術論文

  1. Fukuda E.S., Inoue H., Takenaka T., Kim D., Sadahisa T., Asai T., and Motomura M., "Enhancing memcached by caching its data and functionalities at network interface," IPSJ Journal, vol. 56, no. 3, pp. 143-152 (2015).
  2. Kim D., Hida I., Fukuda E.S., Asai T., and Motomura M., "Reducing power and energy consumption of nonvolatile microcontrollers with transparent on-chip instruction cache," Circuits and Systems, vol. 5, no. 11, pp. 253-264 (2014).

国際会議

  1. Fukuda E.S., Inoue H., Takenaka T., Kim D., Sadahisa T., Asai T., and Motomura M., "Achieving higher performance of memcached by caching at network interface," The 2014 International Conference on Field Programmable Technology, Parkyard Hotel, Shanghai, China (Dec. 10-12, 2014).
  2. Kim D., Hida I., Fukuda E.S., Asai T., and Motomura M., "A study of transparent on-chip instruction cache for NV microcontrollers," The 7th International Conference on Advances in Circuits, Electronics and Micro-electronics, Mercure Lisboa, Lisbon, Portugal (Nov. 16-20, 2014).
  3. Hida I., Kim D., Asai T., and Motomura M., "A 4.5 to 13 times energy-efficient embedded microprocessor with mainly-static/partially-dynamic reconfigurable array accelerator," Proceedings of the Asian Solid-State Circuits Conference 2014, pp. 37-40, 85 Sky Tower Hotel, KaoHsiung, Taiwan (Nov. 10-12, 2014).
  4. Kim D., Fukuda E.S., Sadahisa T., Asai T., and Motomura M., "Hardware architecture for accelerating key-value retrieval implemented on FPGA," The 3rd Japan-Korea Joint Workshop on Complex Communication Sciences, Paradise Hotel, Busan, Korea (Oct. 27-28, 2014).
  5. Fukuda E.S., Inoue H., Takenaka T., Kim D., Sadahisa T., Asai T., and Motomura M., "Caching memcached at reconfigurable network interface," The 24th International Conference on Field Programmable Logic and Applications, Technische Universität München, Munich, Germany (Sep. 2-4, 2014).
  6. Hirao T., Kim D., Hida I., Asai T., and Motomura M., "A restricted dynamically reconfigurable architecture for low power processors," 2013 International Conference on ReConFigurable Computing and FPGAs, Hotel Iberostar Cancun, Cancun, Mexico (Dec. 9-11, 2013).
  7. Hirao T., Kim D., Hida I., Asai T., and Motomura M., "A restricted dynamically reconfigurable architecture for low power processors," Proceedings of the 18th Workshop on Synthesis And System Integration of Mixed Information Technologies, pp. 267-268, Hotel Sapporo Garden Palace, Sapporo, Japan (Oct. 21-22, 2013).

受賞

  1. Kim D., Fukuda E.S., Sadahisa T., Asai T., and Motomura M., "Hardware architecture for accelerating key-value retrieval implemented on FPGA," The 3rd Japan-Korea Joint Workshop on Complex Communication Sciences - Best Student Paper Award, Oct. 28, 2014.

国内学会

  1. 山本 佳生, 定久 紀基, 金 多厚, 福田 駿 エリック, 浅井 哲也, 本村 真人, "頻出アイテムセットマイニング高速化のためのストリームプロセッサ," LSIとシステムのワークショップ, 北九州国際会議場, (北九州市), 2015年5月11-13日.
  2. 定久 紀基, 山本 佳生, 金 多厚, 福田 駿 エリック, 浅井 哲也, 本村 真人, "Locality-Sensitive HashingのスケーラブルなハードウェアアーキテクチャのFPGA実装," 電子情報通信学会総合大会, 立命館大学びわこ・くさつキャンパス, (草津), 2015年3月10-13日.
  3. 定久 紀基, 山本 佳生, 金 多厚, 福田 駿 エリック, 浅井 哲也, 本村 真人, "類似検索を行うLocality-Sensitive Hashingのスケーラブルなハードウェアアーキテクチャ," 電子情報通信学会集積回路研究会・コンピュータシステム研究会合同 平成26年度若手研究会, 機械振興会館, (東京), 2014年12月1-2日.
  4. 金 多厚, 肥田 格, 浅井 哲也, 本村 真人, "不揮発性メモリ搭載マイコンの低電力化を目的とした透過型命令キャッシュの提案と評価," 電子情報通信学会集積回路研究会・コンピュータシステム研究会合同 平成26年度若手研究会, 機械振興会館, (東京), 2014年12月1-2日.
  5. 肥田 格, 平尾 岳志, 金 多厚, 浅井 哲也, 本村 真人, "組み込みプロセッサの低電力化に向けた限定的動的再構成アクセラレータの設計と評価," LSIとシステムのワークショップ, 北九州国際会議場, (北九州市), 2014年5月26-28日.
  6. 金 多厚, 平尾 岳志, 肥田 格, 浅井 哲也, 本村 真人, "命令キャッシュ導入によるフラッシュメモリ搭載マイコンの低電力化," 情報処理学会 計算機アーキテクチャ研究会, 東京工業大学, (東京), 2014年1月23-24日.
  7. 平尾 岳志, 金 多厚, 肥田 格, 浅井 哲也, 本村 真人, "低消費電力プロセッサのための限定的動的再構成アーキテクチャ," 電子情報通信学会 リコンフィギャラブルシステム研究会, 北陸先端科学技術大学院大学, (能美), 2013年9月18-19日.