リザバーコンピューティングにおける高速・省メモリオンライン学習に向けたアンサンブルカルマンフィルタのハードウェアに関する研究
玉田 洸太
2024 年度 卒 /修士(情報科学)
修士論文の概要
本研究は、リザバーコンピューティングにおいて高速かつ省メモリのオンライン学習を実現するためのアンサンブルカルマンフィルタのハードウェア実装に関するものである。近年、人工知能(AI)の分野は急速に発展しており、以前は人間の認知機能を模倣する学習方法が主流だった。しかし、現在の機械学習では、計算モデルを大量のデータで訓練することで高度な予測や推論が可能となり、産業の多くで活用されている。
近年のIoT(モノのインターネット)化により、デバイスは多くの情報を収集するようになり、自動車などのさまざまなモノにもセンサーが搭載されるようになった。この情報をそのままクラウドに送信すると、データ漏洩リスクや通信圧迫の問題が発生する可能性がある。これを解決するために、エッジコンピューティングという手法が提案されており、クラウドに送信する前にデバイス側で情報を処理する小規模なAIが搭載される。
エッジコンピューティングに用いられる機械学習の一つとして、リカレントニューラルネットワーク(RNN)が挙げられる。このネットワークは動的システムの近似に使用されるが、計算リソースの増加が問題となる。リザバーコンピューティングはこの問題を解決するためのモデルであり、その学習プロセスを改善するためにアンサンブルカルマンフィルタが有効である。
本研究では、アンサンブルカルマンフィルタを用いたアーキテクチャを設計・検証した。具体的には、ストリーミング処理による並列計算、除算回数の削減、乱数の累積加算を実装した。回路全体の並列化により、高速化と省メモリ化を実現した。検証としては、乱数生成のパラメータや累積加算に関するシミュレーション、回路のスループット、レイテンシ、メモリ使用量、リングリザバーとの接続検証を行った。
従来の線形回帰やFORCE学習が担ってきたリザバーコンピューティングの学習手法の計算効率を向上させるため、アーキテクチャにストリーミング処理を導入し、各ブロック内の計算を並列化した。これにより、計算時間とリソース消費を削減した。さらに、除算器をビットシフトに置き換え、Mの数値を2の累乗に設定し、正規分布に従う乱数の代替として累積加算を用いる手法を提案した。これらの改良を、Pythonによるデジタル回路シミュレーションを通じて検証し、推定精度を維持しつつ計算速度とメモリ使用量の最適化を実現した。これらの改善により、小規模環境におけるAIの実装が促進されることが期待される。