サブスレッショルドMOSFT特性を用いた温度センサ回路
山田 寛之
2004 年度 卒 /学士(工学)
卒業研究の概要
近い将来、我々の身の回りには多数のスマートセンサとそれらを結ぶネットワークが配置され、生活の快適性を向上させるユビキタスネットワーク情報環境が実現すると予測されている。ユビキタスネットワーク情報環境を構築するためには、多種多様なスマートセンサを広範囲に渡って分散配置する必要がある。このような情報環境を実現する上でのポイントはセンサ電子回路の低消費電力化とコストにある。すなわち第一に、これらのセンサは超小型の電池を電源とするか、あるいは周囲の自然環境から電力を吸収するか、いずれにしても極めて限られた電力消費のもとで動作しなければならない。第二には、これらのスマートセンサは膨大な個数が必要であり、かつ使い捨ての使用形態となることが多いので、センサチップは廉価・低コストでなければならない。
以上の要求に応えるべく本研究では、極低電力・低コストという制約条件のもとで高機能処理を行なうスマートセンサを実現するために、MOSFETのサブスレッショルド領域動作を前提とした集積回路の設計・開発を行った。特に、MOSFETのサブスレッショルド特性を用いた温度センサ回路を提案した。この温度センサ回路の電流値は、デバイスサイズを変更することにより、温度に対して急峻に、もしくはゆっくりと変化するように設定することが可能である。さらに、設定デバイスサイズを工夫することにより、ある動作温度において回路を流れる電流値をゼロと設定することも可能である。サブスレッショルド領域動作であるため、回路の消費電力を数uW 以下で構成することができる。サブスレッショルド特性を有効に利用した、従来にない機能的なLSIを開発することができる。
サブスレッショルド領域で動作するLSIの設計は現在までほとんど行なわれていない。しかし、サブスレッショルド領域動作を念頭においた回路設計の手法を確立し、LSIアーキテクチャを開発し、そして応用システムのための要素回路を開拓することは、来るべきユビキタス情報社会を支えるLSIシステム開発のために重要な基盤技術である。
国内学会
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